★沖ノ島は自然の宝庫
 沖ノ島は、高さ12.8メートル、面積約4.6ヘクタール、周囲約1キロメートルの陸つづきの小島です。高ノ島と同様にそのむかしは館山湾にうかぶ島でしたが、現在は砂州によってつながれた陸続きの島になっています。
 この砂州は、大正12年の関東大地震のときに沖ノ島の地盤が隆起し、さらに館山海軍航空隊の埋立で島が陸に近づき、その間を流れる潮の流れが漂砂を運んで堆積し、長い年月をの間にだんだん浅くなり、昭和28年に陸続きになりました。現在では、長さ200メートル、幅30メートルから80メートルという砂州になっています。

●沖ノ島の植物
 沖ノ島の植物の数は、シダ類以上240種あまりを数えることができ、千葉県の海岸で見られるほとんどの植物を、この小さな島で観察することができます。

●もっと知りたい!
 島の北西部の海岸から、中央広場に向かう道を歩くと、ハマゴウ、オオバグミ、トベラなどの小さな低木から、しだいにヒメユズリハ、ヤビニッケイ、タブノキなどの大きな高木林に変わっていくという、海岸林の移り変わるようすを見ることができます。
 宇賀明神のわきには、沖ノ島最大のタブノキ(樹高約18メートル、目の高さの直径約1メートル)の老木があります。
 沖ノ島のもう一つの見どころは、ハマオモト、ハマナタマメ、イソギンチャクなどが見られることです。
 秋に岩場に咲くイソギクは、銚子から御前崎、伊豆七島などの限られた海岸に自生する海岸植物です。ハマナタマメ、ハマオモトは南方系の植物で、南房総を北限とする海岸植物です。
 南東部の海岸崖地では、ハチジョウススキやハマナタマメ、ハマオモト、ヒゲスゲ、ソナレムグラ、ハマナデシコ、タイゴトメ、ガクアジサイ、イソギク、ツワブキなどが見られます。
 北西部の砂浜ではハマダイコン、ネコノシタ、タイトゴメなどの海岸植物が見られます。無人灯台のまわりには、春にはトベラの花が咲き、秋にはハマゴウが咲きます。
 島の中の林に入ると東部と南部はタブノキ、ヤブニッケイなど照葉樹林で、その下にはフウトウカズラやアスカイノデが多く見られます。
 展望台への道にはヤブツバキが多く、中央広場周辺にはアカメガシワ、クサギ、カラスザンショウなどの落葉樹が茂っています。
 北東部の林の下には、春になるとウラシマソウの花が群生して咲きます。紫色の花が仏炎苞に包まれ、中の肉穂の先が長く伸びています。釣り糸のように垂れ下がる姿を浦島太郎の釣り糸に見たて、この名がつきました。



★沖ノ島のサンゴと海中のお花畑
 沖の島の水深5メートルほどの沖合いにエダミドリイシ、ニホンアワサンゴ、キクメイシなど20種以上の造礁サンゴを見ることができます。
 これらイシサンゴ類の群生は、学術的にも貴重な存在で、海洋学者から貴重な研究材料として注目されています。研究者による潜水調査では、沖ノ島をはじめ、坂田から波左間周辺、大房岬から雀島周辺、さらには鋸南町岩井袋沖の岩礁などでも観察され、このあたりいったいは、北限に近いサンゴの海として世界的にも知られています。

●もっと知りたい!
 館山湾周辺のイシサンゴ類は、オーストラリアの海洋学者らによって、現在25種が報告されています。今後の調査により、その数は増加すると考えられています。またこれらの岩礁では、イシサンゴ類に限らずソフトコーラルと呼ばれるウミトサカやヤギ類を見ることができます。その群生のようすは海中のお花畑にたとえられ、ダイバーたちの人気をよんでいます。
●いその生き物
 沖ノ島に続く砂州には、3月にアオサ、ワカメ、5月にはアラメやカジメ、ナガミル、ミル、ミリンなどの流れ藻が打ち上げられます。
 南東部のいそでは、アオサやヒジキ、ウミウチワ、ウミトラノオなど海そうのほか、潮だまり(タイドプール)ではドロメ、イソスジエビ、オオへビガイ、クロイソカイメンなど小さな生き物が見られます。
 北西部のいそでは、岩にあなをあけてすむイシマテガイやカサガイのなかまのカモガイも見られます。北東のいそのまわりでは、巻貝のタマキビ、アラレタマキビが見られ、岩棚にはウメボシイソギンチャクがへばりついています。
 また、8月中旬をすぎると南方からの使者ともいえる色あざやかな小さな魚たちが見られるようになります。チョウチョウウオやスズメダイ、ツノダシ、キンチャクダイ、ベラなどのなかまで、沿岸の岩場や潮だまり(タイドプール)でも見ることができます。
 東の砂浜では、いその石を動かすとアマオブネ、マツバガイ、バフンウニ、クモヒトデ、イソクズガニなどの小動物が見つかります。