★サンゴの世界
 「沖ノ島の豊かな自然を、多くの人に伝えたい」と、沖ノ島のサンゴの生態を調査しながら、海辺の清掃をかねたサンゴ観察会や講演活動を続けている三瓶さん。はじめて沖ノ島のサンゴと出会ったのが1987年の夏。以来、サンゴの世界に魅せられ、10年以上にわたって沖ノ島のサンゴを見守っています。

●沖ノ島のサンゴたち
「サンゴは、西岬地区の坂田や波左間周辺から富津岬にいたる内房に広く分布しています。沖ノ島の海は、北限に近いサンゴの海として世界的にも知られています。たくさんのサンゴが深い海底だけでなく、浅瀬にも生息していて、海にもぐらなくても見ることができます。一部の人だけの世界でないのが魅力」という三瓶さん。
 今までに確認したサンゴは、沖ノ島周辺で32種、315個体にのぼるといいます。三瓶さんによると、沖ノ島の南側の浅瀬では、キクメイシモドキを見ることができるそうです。うすくドロをかぶっていることが多く、いその中に溶け込むように生きています。一番大きいのは直径40センチで、色はピンクがかった橙色です。
 沖ノ島周辺の浅瀬は冬の間、北風によって表層水が冷やされ、10度まで下がるときがあります。大潮のとき、キクメイシモドキは、夜間約3時間ほど海面から出て外気にさらされるなど、きびしい環境のなかで生きています。
 また、暖かい黒潮が流れる沖ノ島の北側から西側では、直径1メートルほどのサンゴがいくつも生きています。主に、キクメイシ、エダミドリイシ、イボサンゴ、ベルベットサンゴ、アミメサンゴ、ニホンアワサンゴなどです。「こうしたサンゴたちが生きていけるのは、黒潮のおかげです」と三瓶さん。
 1995年8月には、沖ノ島近くの水深4メートルの浅瀬で生きている、エダミドリイシとキクメイシの産卵(卵と精子が入ったバンドルを放出)を素もぐりで確認。30分続いたサンゴの一斉産卵に、「生命の営みのすばらしさに感動した」といいます。